谷川 俊太郎 1931年12月東京生まれ。豊多摩高等学校卒。肉声の魅力によって現代詩に独自の領域をきりひらく。ラジオ・ドラマ、劇作など幅広い領域で活躍。詩集「二十億光年の孤独」「定義」「日々の地図」「手紙」他多数。 谷川俊太郎 生于1931年12月,家住东京杉並区,当代著名诗人。他的诗极富幻想性,给人一种新鲜感,读来耳目一新。主要诗集有《二十亿光年的孤独》,《关于爱》等多部。。
地球へのピクニック
ここで一緒になわとびをしよう ここで ここで一緒におにぎりを食べよう ここでおまえを愛そう おまえの目は空の青をうつし おまえの背中はよもぎの緑にそまるだろう ここで一緒に星座の名前を覚えよう
ここにいてすべての遠いものを夢みよう ここで潮干狩をしよう あけがたの空の海から 小さなひとでを取って来よう 朝御飯にはそれを捨て 夜をひくにまかせよう
ここでただいまを云い続けよう おまえがお帰りなさいを繰り返す間 ここへ何度でも帰って来よう ここで熱いお茶を飲もう ここで一緒に坐ってしばらくの間 涼しい風に吹かれよう
つづく
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頼み
裏返せ 俺を 俺の中の畠を耕せ 俺の中の井戸を干せ 裏返せ 俺を 俺の中身を洗ってみな 素敵な真珠が見つかるだろう 裏返せ 俺を 俺の中身は海なのか 夜なのか 遠い道なのか ポリエチレンの袋なのか 裏返せ 俺を 俺の中に何が育っている 熟れすぎたサボテン畑か 一角獣の月足らずの赤坊か ヴアイオリンになりそこなった栃の木か 裏返せ 俺を 俺の中身を風にさらせ 俺の夢に風邪をひかせろ 裏返せ 俺を 俺の観念を風化させろ 裏返せ 裏返してくれ 俺を 俺の皮膚を匿してくれ 俺の額は凍傷にかかっている 俺の眼は羞恥で真赤 俺の唇は接吻に飽きた 裏返せ 裏返してくれ俺を 俺の中身に太陽を拝ませてやってくれ 俺の胃や脺臓を草の上にひろげて 赤い暗闇を蒸発させろ 俺の肺臓に青空を詰めろ 俺の輪精管はもつれたままで 黒い種馬たちに踏みにじらせろ 俺の心臓と脳髄は白木の箸で 俺の恋人に食わせてやってくれ
裏返せ 裏返してくれ 俺を 俺の中の言葉たちを 喋らせちゃってくれ 早く 俺の中の弦楽四重奏を 鳴らしちゃってくれ 俺の中の年とった鳥たちを 飛ばしちゃってくれ 俺の中の愛を すっちゃってくれ 悪い賭場で
裏返せ裏返してくれよ俺を 俺の中のうその真珠はくれてやるから 裏返してくれ裏返してくれよ俺を 俺の中の沈黙だけはそっとしといて 生かせてくれ俺を 俺の外へ あの樹蔭へ あの女の上へ あの砂の中へ
つづく 空に小鳥がいなくなった日
森にけものがいなくなった日 森はほっそり息をこらした 森にけものがいなくなった日 ヒトは道路をつくりつづけた
海に魚がいなくなった日 海はうつろにうねりうめいた 海に魚がいなくなった日 ヒトは港をつくりつづけた
街にこどもがいなくなった日 街はなおさらにぎやかだった 街にこどもがいなくなった日 ヒトは公園をつくりつづけた
ヒトに自分がいなくなった日 ヒトはたがいにとても似ていた ヒトに自分がいなくなった日 ヒトは未来を信じつづけた
空に小鳥がいなくなった日 空は静かに涙がした 空に小鳥がいなくなった日 ヒトは知らずに歌いつづけた
当天空没有了小鸟 -----张建华译
当森林里没有了野兽, 森林悄悄地发出了叹息. 当森林里没有了野兽, 人们仍继续修建着公路.
当大海里没有了鱼儿, 海浪发出了迷惘的呻吟. 当大海里没有了鱼儿, 人们仍继续建设着港口.
当街上没有了孩子, 街道仍旧热闹喧嚣. 当街上没有了孩子, 人们仍继续建造着公园.
当人们失去了自己, 人们将变得彼此酷似. 当人们失去了自己, 人们仍然相信着未来.
当天空没有了小鸟, 蓝天静静地流下了热泪. 当天空没有了小鸟, 人们浑然不知地继续歌唱.
つづく
うそとほんと
うそはほんとによく似てる ほんとはうそによくにてる うそとほんとは 双生児
うそはほんととよくまざる ほんとはうそとよくまざる うそとほんとは 化合物
うその中にうそを探すな ほんとの中にうそを探せ ほんとの中にほんとを探すな うその中にほんとを探せ
谎言与真话 ---- 孙伯韬
真话与谎言相似, 谎言酷似真话。 谎言与真话, 是孪生的兄弟俩
谎言与真话相掺, 面目全非话与谎言混杂。 谎言与真话, 又是一个化合物。
不要在谎言中寻求谎言, 要在真话中寻求谎言。 不要在真话中探寻真话, 要在谎言中探寻真话。
つづく
かなしみ
あの青い空の波の音が聞こえるあたりに 何かとんでもないおとし物を 僕はしてきてしまったらしい
透明な過去の駅で 遺失物係の前に立ったら 僕は余計に悲しくなってしまった
悲伤 ---朱佳强译
在那蓝色的天空下 涛声清晰的地方 我仿佛丢失了某件无足轻重的东西
在透明的过去的车站 站在失物招领处前 我显得更加地悲伤
ほほえみ
ほほえむことができぬから 青空は曇を浮べる ほほえむことができぬから 木は風にそよぐ
ほほえむことができぬから 犬は尾を振り――だが人は ほほえむことができるのに 時としてほほえみを忘れ
ほほえむことができるから ほほえみで人をあざむく
微笑 ---孙伯韬译
因为不会微笑, 蓝天把彩云托起. 因为不会微笑, 树木才迎风摇曳.
因为不会微笑, 犬才摇尾求乞. 而人尽管会微笑, 却时常忘记.
因为人会微笑, 才用微笑把他人蒙蔽.
帰 郷
私が生まれた時 私の重さだけ地が泣いた 私は少量の天と地でつくられた 別に息をふきかけないでもよかった 天も地も生きていたから
私が生まれた時 庭の栗の木がちょっとふり向いた 私は一瞬泣き止んだ 別に天使が木をゆすぶった訳でもない 私と木と兄弟だったのだから
私が生まれた時 世界は忙しい中を微笑んだ 私は直ちに幸せを知った 別に人に愛されたからでもない 私は只世界の中に生きるすばらしさに 気づいたのだ
やがて死が私を古い秩序にくり入れる それが帰ることなのだ…
归 乡 ---孙伯韬译
当我出生之际, 仅仅因为我的重量, 大地曾哭泣. 而我是由少量天、地组成的一体。 我可以不呼吸, 因为活着的有天空和大地。
当我出生之际, 院中的栗树蓦然回首, 我霎时停止哭啼。 并非是天使将树木摇曳, 而是因为我和树木曾是兄弟。
当我出生之际, 世界在忙碌中露出微笑, 我立刻懂得了温馨。 这并非是因为我讨人喜爱, 而是我觉察到生在这个世界上的欣喜。
终有一天, 死神会把我编入陈旧的秩序, 而那是我回归故里……
父の唄
遠く行け息子よ おれをこえて遠く行け 愛せるだけの女を愛せ だが命かけて愛するのは ただひとりだけ おれがきみのおふくろを愛したように
遠く行け息子よ 地平をこえて遠く行け 拓けるだけの荒野を拓け だが命かけて求めるものは ただひとつだけ おれがついにつかめずに終わった何か
遠く行け息子よ 時をこえて遠く行け 笑えるときには大きく笑え だが涙さしこらえるのは ただ自分だけ おれがいつもひとりでそうしたように
译文
父亲的歌 ---君业译
远走高飞吧!儿子 超越我远走高飞吧! 能爱多少就爱多少 然而,不惜生命去爱的 却只有一个人 就像我爱你的母亲一样
远走高飞吧!儿子 跨越地平线远走高飞吧! 能开拓多少荒野就开拓多少 然而,不惜生命去寻求的 却只有一种东西 就像我始终未曾捕捉到的什么
远走高飞吧!儿子 跨越时空远走高飞吧! 能笑的时候你就开怀大笑 然而,能忍住泪流的 却只有你自己 就像我总是独自哭泣一样
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