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制作草鞋的穷神

来源: wawj | 更新日期:2015-07-13 17:08:09 | 浏览(17)人次

むかしむかし、藤兵衛(ふじへいえい)という、お百姓(ひゃくしょう)がすんでいました。

 この藤兵衛どん、働いても働いてもくらしはらくにならずに、ふえるのは子どもばかりです。

 そのうち、とうとう働く気もなくなってしまいました。

 ある年の冬、藤兵衛どんの家では、子どもたちに食べさせるものが、なにもありません。

「おっかあ、はらへったよう」

「おらもだ、かゆはねえだか」

「はらへって、ねむれねえだ」

 子どもたちに口々にねだられても、藤兵衛どんにはどうすることもできません。

「みんな、よく聞いてくれ」

 藤兵衛どんは、子どもたちをあつめて、悲しそうな顔でこんなことをいいました。

「いままで苦労して、いっしょうけんめい働いてきたが、くらしはいっこうにらくにならん。この冬がこせるかどうかもわからん。そこで、おっかあとも相談したんじゃが、この土地をすててどこかよそにいってくらすことに決めたんじゃ」

「それじゃ、おっとう、夜逃げか?」

「ま、そういうことじゃな、すまねえな。いま出ていくと人目につくで、明日の朝早うに出でいこうと思っとる」

 その夜、藤兵衛一家は、なべやかまをふろしきにつつむと、まくらもとにおいてねました。

 ところが、夜中に便所にいこうとした藤兵衛は、なやでなにかゴソゴソとやっている、見知らぬ男に気がつきました。

「おまえはだれじゃ?」

「おや、まだ起きとったかね? わしゃ、貧乏神(びんぼうがみ)じゃ」

「び、貧乏神じゃと?」

「そうじゃあ、長いことこの家にいさせてもろうた」

「そ、それで、こんなところでなにをなさっている?」

「この家の者が、明日の朝早くに、ここからにげだすっちゅうんで、わしもいっしょに出かけようと思ってのう。ほんで、こうしてわらじをあんどったんじゃあ」

と、貧乏神は、あみかけのわらじを見せました。

「それじゃ、この家から出ていくというのか?」

「そうじゃあ。またつぎのところでも、仲良うしてくだっせえ」

「なんじゃあ、それじゃあ、わしらについてくるちゅうだか?」

「そういうことじゃ」

 藤兵衛は、あわてて家にかけもどると、かみさんを起こしました。

「た、たいへんじゃあ。起きろ!」

 夜中にたたき起こされたおかみさん。ねむい目をこすりながら。

「どうしたね、なにをねぼけておる」

「び、貧乏神じゃ。う、うちのなやに貧乏神がおる」

「貧乏神が? それでうちは、いつになってもくらしむきがようならんかったんか」

「うん、うん。そうじゃな」

「でも、いいでねえか。おらたちはこの家を出ていくんだから。貧乏神さまだけのこってもらえば、おらたちはこれかららくになるでねえか」

「それがちがうんじゃ! わしらについてくるっちゅうだ!」

「えっー! ほんなら、おらたち夜にげしても、なんもならんでねえか」

「そういうことじゃなあ」

 二人はガッカリです。

 家を出ていく元気もなくなってしまいました。

 そして、夜が明けました。

 貧乏神はこしにわらじをつけ、出発の用意をして藤兵衛どんたちを待っていましたが、いつになっても出てきません。

「おそいなあ。もう、日ものぼるというのに、どうしたんかいなあ。たしかに、けさ、にげだすちゅうことじゃったが。もしや、あすじゃったかのう? まあ、ええわい。わらじはよけいあるほうがええわ」

 貧乏神は、またなやに入って、せっせとわらじをあみだしました。

 一日がすぎて、一日、また一日と、日がたちましたが、藤兵衛どんは、いっこうに家を出ていくようすがありません。

 貧乏神は、毎日わらじをあみつづけていましたが、そのうちに、わらじ作りがおもしろくなってきて、いつのまにやら、のきさきには、わらじがドッサリとたまってしまいました。

 こうなると、人目につきます。

 そのうち、わらじをわけてくれと、村の人がくるようになりました。

 貧乏神は気前よく、

「さあ、どれでもすきなのを持っていきなされ」

「すまんのう。ありがとよ」

「ありがたいこっちゃあ」

 村の人はつぎつぎにやってきて、大よろこびでわらじを持って帰ります。

 それを見ていた藤兵衛どんは、いいことを思いつきました。

「おお、そうじゃ。あのわらじを売ればいいんじゃ」

 さっそく藤兵衛どんは、貧乏神のあんだわらじを持って、村へ町へと売り歩きます。

「さあ、安いよ、安いよ。じょうぶなわらじだよ」

 わらじは、どこへいってもとぶように売れ、たちまちなくなってしまいました。

 だけど、くらしむきはすこしもよくなりません。

「やっぱり貧乏神がいては、貧乏からぬけだせんなあ。こうなったら、貧乏神さまに出ていってもらうだ」

 そこで藤兵衛どんは、わらじを売ったのこりの金で、ありったけの酒やごちそうを用意して、貧乏神をもてなしました。

「貧乏神さま、きょうはゆっくりやすんでくだされ。さあ、えんりょのう食べて、飲んでくだされ」

「これはこれは、たいへんなごちそうじゃなあ」

「貧乏神さまには、いつも苦労してもろうておるで」

 おかみさんも、貧乏神におしゃくをしながらいいました。

「そうじゃ、わらじをあんでくださるで、このごろはたいそうくらしもらくになったでなあ」

「さあ、きょうはいっしょにいわってくだされ」

「そうかそうか。それじゃ、よろこんでいただくとしようか」

 貧乏神はすすめられるままに、食べたり飲んだり。

「いや~、すっかりごちそうになってしもうて。だけど、こげんくらしむきがよくなっては、わしゃもう、この家にはおれん」

 貧乏神は、そういうと家から出ていきました。

 二人は顔を見合わせて、大よろこびです。

「出ていった。出ていったぞ! わしらも、これでやっとらくになれるぞ」

「よかった、よかった」

 こうして、藤兵衛どんとおかみさんは、安心してグッスリねむりました。

 ところが、いつものように夜中に便所にいった藤兵衛どんはビックリ。

 出ていったはずの貧乏神が、いるのです。

「ま、まだ、いたのか!」

 貧乏神は藤兵衛どんを見てニッコリ。

「ここが一番、すみやすいのでな」

 しつこい貧乏神に、藤兵衛どんはすっかり力をなくして、その場にへたりこんでしまいました。

 それからも貧乏神は、藤兵衛どんの家でわらじ作りにせいを出しいるということです。

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