第9章社会保険及び福利
第70条
国家は社会保険事業を発展させ、社会保険制度を樹立し、社会保険基金を設立し、労働者の老齢、疾病、業務上の負傷、失業、出産等に際し補助及び補償を与える。
第71条
社会保険の水準は社会経済の発展水準及び社会負担能力に応じたものでなければならない。
第72条
社会保険基金は保険の類型により資金源を定め、遂次社会全般の統一的調達を実施する。使用者及び労働者は法に従い社会保険に加入し、社会保険費を支払わねばならない。
第73条
労働者は下記のいずれかに該当するときは法に従い社会保険の給付を受ける。
(1) 定年退職
(2) 疾病、負傷
(3) 業務上の負傷・障害又は職業性疾病
(4) 失業
(5) 出産
労働者が死亡したときは、その遺族は法に従い遺族手当を受ける。
労働者が社会保険給付を受ける条件及び基準は法律、法規により規定する。
労働者が受ける社会保険金は定められた期限に満額を支給しなければならない。
第74条
社会保険基金運営機構は法律の規定に従い社会保険基金の収支、管理及び運用を行い且つ社会保険基金の価値を維持し増加させる責任を負う。
社会保険基金監督機構は法律の規定に従い、社会保険の収支、管理及び運営に対し監督を実施する。
社会保険基金運営機構及び社会保険基金監督機構の設立及び機能は法律で定める。
いかなる組織又は個人も社会保険基金を流用してはならない。
第75条
国家は使用者がその実情に基づき労働者の為に補充的保険を設けることを奨励する。
国家は労働者個人が貯蓄性保険に加入することを提唱する。
第76条
国家は社会福利事業を発展し、公共福利施設を建設し、労働者の休息、休養及び療養のための環境を提供する。
使用者は、集団福利を改善し労働者の福利待遇を向上させるための環境を創出しなければならない。
第10章労働争議
第77条
使用者と労働者との間に労働争議が発生した場合、当事者は法に従い調停、仲裁を申し立て、訴訟を提起することができ、又協議により解決を図ることもできる。
調停の原則は、仲裁及び訴訟手続きに適用される。
第78条
労働争議を解決するに当たっては、合法、公正、即時処理の原則に従い、法に従い労働争議当事者の合法権益を保護しなければならない。
第79条
労働争議が発生した場合当事者は当該企業に設置された労働争議調停委員会に調停を申請することができる。調停が不調に終わり、当事者の一方が仲裁を請求する場合には、労働争議仲裁委員会に仲裁を申請することができる。当事者の一方は直接労働争議仲裁委員会に仲裁を申請することもできる。仲裁裁定に不服があるときは人民裁判所に訴訟を提起することができる。
第80条
使用者はその企業内に労働争議調停委員会を設立することができる。労働争議調停委員会は労働者代表、使用者の代表及び労働組合代表から構成される。労働争議調停委員会の主任は労働組合の代表が担当する。
労働争議が調停により協議が成立した場合には、当事者は履行しなければならない。
第81条
労働争議仲裁委員会は、労働行政部門の代表、同級レベルの労働組合の代表、使用者側の代表から構成される。労働争議仲裁委員会の主任は行政部門の代表が担当する。
第82条
仲裁の要求を提出する一方の当事者は労働争議発生の日から60日以内に労働争議仲裁委員会に書面による申請を提出しなければならない。仲裁裁決は、原則として、仲裁申請受理の日から60日以内に行うべきである。仲裁裁決に異議がない場合当事者は履行しなければならない。
第83条
労働争議の当事者が仲裁裁定に不服がある場合には、仲裁裁定書を受け取った日から15日以内に人民裁判所に提訴することができる。当事者の一方が法定の期間内に提訴せず且つ仲裁裁定の履行もしないときには、他方の当事者は人民裁判所に強制執行を申請することができる。
第84条
労働協約の締結に関して争議が発生し、当事者が協議により解決することができない場合には、当該地区の人民政府の労働行政部門は調整して処理するよう関係各部門に働きかけることができる。
労働協約の履行に関して争議が発生し、当事者が協議により解決することができない場合には、労働争議仲裁委員会に仲裁を申請することができる。仲裁裁定に不服な場合には、仲裁裁定書を受理した日から15日以内に人民裁判所に提訴することができる。
第11章監 督 検 査
第85条
県レベル以上の各レベル人民政府の労働行政部門は法により使用者に対し、労働法律法規の遵守状況について監督検査を実施し、労働法律法規に違反する行為に対し中止させ、改善を命ずる権限を有する。
第86条
県レベル以上の各レベル人民政府の労働行政部門の監督検査員は、公務を執行する場合、使用者の労働関係法律法規の遵守状況を調査する為、立ち入り、必要資料を閲覧し、作業場を検査する権限を有する。
県レベル以上の各レベル人民政府の労働行政部門の監督検査員が公務を執行する際には証明文書を提示し、公平に法を執行し、関係規定を遵守しなければならない。
第87条
県レベル以上の各レベル人民政府の関係部門はそれぞれの職責の範囲内で使用者に対し、労働法律、法規の遵守状況について監督を行う。
第88条
各レベル労働組合は法により労働者の合法権益を保護し、使用者の労働法律法規の遵守状況について監督する。
いかなる組織又は個人も労働法律法規に違反する行為について告訴及び告発を行う権利を有する。
第12章法 律 責 任
第89条
使用者が制定した労働規則制度が法律法規の規定に違反した場合には労働行政部門が警告し、改善を命じる。労働者に対して損害を与えた場合には賠償責任を負わなければならない。
第90条
使用者が本法の規定に違反して労働者の労働時間を延長した場合には、労働行政部門が警告し、改善を命じ、併せて罰金に処することができる。
第91条
使用者が、下記のいずれかに該当し労働者の合法的な権益を侵害する場合には、労働行政部門は労働者に賃金を支払い、経済補償を行うよう命ずる。併せて賠償金の支払いを命ずることができる。
(1) 労働者の賃金を控除し又は故なく遅配した場合
(2) 労働者に対し超過勤務に対する労働報酬の支払いを拒否した場合
(3) 当該地区の最低賃金基準を下回る賃金を労働者に支給した場合
(4) 労働契約解除後、本法の規定に従った経済補償を労働者にしなかった場合
第92条
使用者の労働安全施設及び労働安全衛生条件が国家の規定に適合せず又は労働者に対し必要な個人用保護具及び労働保護施設が提供されない場合、労働行政部門又は関係部門が改善を命じ、併せて罰金に処することができる。状況が悪質な場合には、県レベル以上の人民政府に改善のため生産停止を命じるよう要請する。事故のおそれがあるにも係わらず措置を講じなかったため重大事故が発生し、労働者の生命及び財産に損害を発生させた場合には、責任者に対し刑法第187条の規定により、刑事責任を追及する。
第93条
使用者が労働者に違法な危険作業を強制し、重大な死傷事故を発生させ,重大な結果が生じた場合には、責任者に対し法により刑事責任を追及する。
第94条
使用者が満16歳に満たない年少者を違法に使用したときは、労働行政部門が改善を命じ、罰金に処す。状況が悪質な場合には工商行政管理部門が営業許可を取り消す。
第95条
使用者が本法の女性労働者及び年少者である労働者の保護規定に違反してその合法的な権益を侵害したときは、労働行政部門が改善を命じ、罰金に処する。女性労働者又は年少者である労働者に損害を与えたときは賠償責任を負わなければならない。
第96条
使用者が下記のいずれかに該当する場合、公安機関は責任者を15日以下の拘留、罰金又は警告に処する。犯罪を構成する場合は、責任者に対し法により刑事責任を追及する。
(1) 暴力、威嚇又は身体の自由を不法に拘束する手段により労働を強制した場合
(2) 労働者に対し、侮辱、体罰、殴打、違法な捜索又は拘禁を行った場合
第97条
使用者に帰すべき事由により無効の契約が締結され、労働者に損害が生じた場合、使用者は賠償責任を負わなければならない。
第98条
使用者は、本法の規定する条件に違反して労働契約を解除し又は故意に労働契約の締結を遅延させた場合には、労働行政部門が改善を命じる。労働者に与えた損害については賠償責任を負わなければならない。
第99条
使用者は労働契約未解除の労働者を採用し、現使用者に損害を与えたときは、当該使用者は法に従い連帯賠償責任を負わなければならない。
第1OO条
使用者が理由なく社会保険料を納入しなかったときは、労働行政部門は期限を定めて納入を命ずる。期限を越えて納入しなかったときは滞納金を加徴する。
第101条
使用者が理由なく労働行政部門、関係部門及びその職員の監督検査権の行使を妨害し、通報者に報復したときは、労働行政部門又は関係部門が罰金に処する。犯罪を構成するときは、責任者に対し、法により刑事責任を追及する。
第102条
労働者が本法の規定する条件に違反して労働契約を解除し又は労働契約において定めた秘密保持条項に違反し使用者に損害を与えた場合には法に従い賠償責任を負わなければならない。
第103条
労働行政部門及び関係部門の職員は、職権を濫用し、職務を懈怠し、私利を図り、犯罪を構成する場合には法により刑事責任を追及される。犯罪を構成するに到らないときは行政処分を行われる。
第104条
国家機関職員及び社会保険基金運営機構の職員が、社会保険基金を流用し犯罪を構成する場合には、法により刑事責任を追及される。
第105条
本法規定に違反して労働者の合法的権益を侵害したとき、他の法律又は行政法規に処罰規定がある場合には、当該法律又は行政法規の規定に従い処罰する。
第13章附則
第106条
省、自治区、直轄市人民政府は本法及び当該地区の実情に応じ、労働契約制度の実施細則を定め、国務院に報告する。
第107条
本法は1995年1月1日から施行する。
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