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日语阅读:人造美人

来源: 万语网 | 更新日期:2007-08-21 18:16:21 | 浏览(233)人次

  そのロボットは、うまくできていた。女のロボットだった。人工的なものだから、いくらでも美人につくれた。あらゆる美人の要素をとり入れたので、完全な美人ができあがった。もっとも、少しつんとしていた。だが、つんとしていることは、美人の条件なのだった。

  ほかにはロボットを作ろうなんて、だれも考えなかった。人間と同じに働くロボットを作るのは、むだな話だ。そんなものを作る費用があれば、もっと能率のいい機械ができたし、やとわれたがっている人間は、いくらでもいたのだから。

  それは道楽で作られた。作ったのは、バーのマスターだった。バーのマスターというものは、家に帰れば酒など飲む気にならない。彼にとっては、酒なんかは商売道具で、自分で飲むものとは思えなかった。金は酔っぱらいたちがもうけさせてくれるし、時間もあるし、それでロボットを作ったのだ。まったくの趣味だった。

  趣味だったからこそ、精巧な美人ができたのだ。本物そっくりの肌ざわりで、見わけがつかなかった。むしろ、見たところでは、そのへんの本物以上にちがいない。

  しかし、頭はからっぽに近かった。彼もそこまでは、手がまわらない。簡単なうけ答えができるだけだし、動作のほうも、酒を飲むことだけだった。

  彼は、それが出来あがると、バーにおいた。そのバーにはテーブルの席もあったけれど、ロボットはカウンターのなかにおかれた。ぼろを出しては困るからだった。

  お客は新しい女の子が入ったので、いちおう声をかけた。名前と年齢を聞かれた時だけはちゃんと答えたが、あとはだめだった。それでも、ロボットと気づくものはいなかった。

  「名前は」

  「ボッコちゃん」

  「としは」

  「まだ若いのよ」

  「いくつなんだい」

  「まだ若いのよ」

  「だからさ……」

  「まだ若いのよ」

  この店のお客は上品なのが多いので、だれも、これ以上は聞かなかった。

  「きれいな服だね」

  「きれいな服でしょ」

  「なにが好きなんだい」

  「なにが好きかしら」

  「ジンフィーズ飲むかい」

  「ジンフィーズ飲むわ」

  酒はいくらでも飲んだ。そのうえ、酔わなかった。

  美人で若くて、つんとしていて、答えがそっけない。お客は聞き伝えてこの店に集まった。

  「お客のなかで、だれが好きだい」

  「だれが好きかしら」

  「ぼくを好きかい」

  「あなたが好きだわ」

  「こんど映画へでも行こう」

  「映画へでも行きましょうか」

  「いつにしよう」

  答えられない時には信号が伝わって、マスターがとんでくる。

  「お客さん、あんまりからかっちゃあ、いけませんよ」

  と言えば、たいていつじつまがあって、お客はにが笑いして話をやめる。

  マスターは時どきしゃがんで、足の方のプラスチック管から酒を回収し、お客に飲ませた。

  だが、お客は気がつかなかった。若いのにしっかりした子だ。べたべたおせじを言わないし、飲んでも乱れない。そんなわけで、ますます人気が出て、立ち寄る者がふえていった。

  そのなかに、ひとりの青年がいた。ボッコちゃんに熱をあげ、通いつめていたが、いつも、もう少しという感じで、恋心はかえって高まっていった。そのため、勘定がたまって支払いに困り、とうとう家の金を持ち出そうとして、父親にこっぴどく怒られてしまったのだ。

  「もう二度と行くな。この金で払ってこい。だが、これで終りだぞ」

  彼は、その支払いにバーに来た。今晩で終りと思って、自分でも飲んだし、お別れのしるしといって、ボッコちゃんにもたくさん飲ませた。

  「もう来られないんだ」

  「もう来られないの」

  「悲しいかい」

  「悲しいわ」

  「本当はそうじゃないんだろう」

  「本当はそうじゃないの」

  「きみぐらい冷たい人はいないね」

  「あたしぐらい冷たい人はいないの」

  「殺してやろうか」

  「殺してちょうだい」

  彼はポケットから薬の包みを出して、グラスに入れ、ボッコちゃんの前に押しやった。

  「飲むかい」

  「飲むわ」

  彼の見つめている前で、ボッコちゃんは飲んだ。

  彼は「勝手に死んだらいいさ」と言い、「勝手に死ぬわ」の声を背に、マスターに金を渡して、そとに出た。夜はふけていた。

  マスターは青年がドアから出ると、残ったお客に声をかけた。

  「これから、わたしがおごりますから、みなさん大いに飲んで下さい」

  おごりますといっても、プラスチックの管から出した酒を飲ませるお客が、もう来そうもないからだ。

  「わーい」

  「いいぞ、いいぞ」

  お客も店の子も、乾杯しあった。マスターもカウンターのなかで、グラスをちょっと上げてほした。

  その夜、バーはおそくまで灯がついていた。ラジオは音楽を流しつづけていた。しかし、だれひとり帰りもしないのに、人声だけは絶えていた。

  そのうち、ラジオも「おやすみなさい」と言って、音を出すのをやめた。ボッコちゃんは「おやすみなさい」とつぶやいて、つぎはだれが話しかけてくるかしらと、つんとした顔で待っていた。

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